「情熱・先端Mission-E」参加(校長ブログ258)
2025年度の「情熱・先端Mission-E」に開智生が参加し、「プレゼンテーション賞」をいただきました。おめでとうございます。22人による大所帯のメンバーで協力して制作を行い、見事受賞につなげました。そのうちの7人にインタビューをしました。現5年生の、青木さん、楠田さん、手嶋さん、トモリさん、永野さん、首藤さん、小川さんです。
【「情熱・先端Mission-E」とは】
「『情熱・先端 Mission-E』は、高校生が最前線で活躍するエンジニアから知識や視点を学び、約8ヶ月をかけて手を動かしながら社会課題の解決方法を学ぶSTEAM教育プログラムです。本プログラムを通じてエンジニアリングの世界を体感し、その魅力に触れることで、未来を担うエンジニアが育つことを目指しています。」
〇スペースアーキテクチャープロジェクト(関東地区)
冬季五輪競技場の設計を想定して、柱のない巨大で丈夫な「空間構造物(スペースアーキテクチャー)」の設計に取り組みます。実際の大きさの1/100程度の構造模型の設計・製作にとどまらず、構造物を建てる際に重要となる、環境との調和、イベント後の活用プラン などの総合点で競います。(日鉄エンジニアリング株式会社様HPより)
~~参加したきっかけ~~
化学の授業中に「ミッションEというプロジェクトがあります。建築などの理系分野に興味がある人は参加してみたらどうですか?」と久保先生に言われて、面白そうだなと思ったのがきっかけです。
最初は別の公募に応募したのですが、一次審査の志望動機の段階で通らなくて、それでは何をしようかと考えていたところで、この「ミッションE」の話があり、「これにしよう」と決めました。
~~めざしていたもの~~
まずは「60kgの重りに耐える構造」にするということになりました。その目標をもとに、構造全体を決定していきました。 「接合部を少なくすること」をめざしました。接合部を減らした方が荷重が分散しますし、壊れる原因となる箇所も減ります。これまでの実験の過程で、部材にかかる「圧縮力(折れる力)」や「引張力(引っ張られて破損する原因)」など、様々な要因で壊れてしまった経験があったので、それらへの対策を設計に盛り込みました。最終的な構造は、四角錐を二重に重ねた形になりました。一点に荷重をかけた時に、8方向に分散させることで、うまく力を逃がせるのではないかと考えました。
~~大変だったこと~~
全体の構造物を作る際、小さい単位のパーツを積み重ねていくことになります。その一つひとつのパーツの精度の管理が非常に難しかったです。ダブルチェックのシステムを作りました。まず、ある班が棒を切り出し、別の班がその長さなどが本当に正しいかをチェックします。そして、基準を満たした良いものだけを採用することで、正確なものだけが使われるようにしました。パーツごとに分担し、進捗状況をスプレッドシートで管理しました。それが評価の大きな決め手になったと思います。必要な個数や、進捗状況、また精度に問題があった場合に同じ班で確認し合えるようにするといったことを、徹底しました。
パーツの正確性を保ちつつ、最終的にドームとして組み上げる作業が一番難しかったです。どうしても人力になるので誤差が生まれますし、特にこれだけ大きな構造物だと、小さなズレが最終的に大きな歪みになってしまいます。それを解決するために、僕たちは「治具」を作ることにしました。最初の中間発表会の時は、棒を2本使って角度だけを測るような簡易的なものでした。でも他校が3Dプリンターで治具を作っているのを見て、僕たちも作ろうとしました。しかし、学校の3Dプリンターが使用できず、プラ板での作成も性質上難しい。最終的には、この発泡スチロールを使った治具を作成して、そこに棒を刺して固定していく方法に辿り着きました。
私は主に、最終的な構造物の3Dモデル作成を担当しました。コンテストの過程で竹中工務店様を訪問した際、大まかな構造の仕組みは理解できたのですが、詳細な寸法までは決まっていませんでした。 そこでアプリを使って3Dモデルを作ったのですが、最初は全ての点の座標を一つずつ打ち出していたんです。でも、後から修正が入るたびにやり直すのが大変でした。工夫した点として、点の座標を「関数」にしました。数値を一つ変えれば、連動して全ての座標が変わるように設計しことは、うまくいったと思います。
後活用の面でも、よくあるアイデアだと注目されないので、どうやってオリジナリティを出すかを考えました。 また、今回の設定が「北海道の札幌に作る」と仮定されていたので、土地柄に合わせた工夫が必要でした。埼玉なら分かりますが、札幌のことは詳しくないので、調べるのが大変でした。東京理科大学の伊藤先生のところまで、活用のことについてお話を聞きに行ったりもしました。
プレゼンを担当していましたが、実は最初の集まりで原稿が全部飛んでしまったことがあって……。その失敗から、中間発表などのたびに「どうすれば聞き手に分かりやすく、自分たちの努力や思いが伝わるか」を必死に考えました。久保先生のアドバイスもいただきながら、1年間の全てを詰め込んだ最終コンテストのプレゼンで賞をいただけたのは、本当に誇らしく、嬉しいことでした。
~~学んだこと~~
私はこれまで一人で探究活動をしてきたので、チームの仲間や先生、外部の大人の方々とアイデアを出し合いながら進めることの良さを、今回改めて学びました。
インターネットで調べるだけでは限界があるので大学を訪問したのですが、アポイントのメールの送り方から一つひとつ調べて挑戦しました。新しいことに踏み出すやりがいを感じました。
これまでは「建物を設計する人がいる」ことは想像できても、その周辺の利用方法まで研究している人がいるとは知らなかったので、非常に視野が広がりました。
私は、これほど長期間一つのことに取り組む経験が今までありませんでした。7月から3月まで約8ヶ月間です。ふとした時にプロジェクトのことを考えたり、自分の惰性よりも作業を優先したりすることに抵抗がなくなったのが、個人的には最大の収穫かもしれません。
結果から言うと、耐荷重は4kgから6kg程度で、他校の20kgなどに比べると振るいませんでした。その原因は、設計の前提条件にありました。 本当は、4箇所の接点のうち1箇所だけを固定し、他を自由に動かすことで水平材が機能するように設計していたんです。竹中工務店の方にいただいたデータでもそうなっていました。しかし、組み立ての段階で歪みを恐れて、深く考えずに全部固定してしまったんです。本番で「前提条件が変わると、これほど結果が変わるのか」と痛感しました。「前提を疑うことの大切さ」を身に染みて学びました。
私は建築業界の方々と交流できたことが一番の学びでした。日鉄エンジニアリング様など、多くの企業の方からアドバイスをいただければより良いものが作れるのではないかと思い、自分たちで直接アポを取ってインタビューに行きました。 メールのやり取りも初めての経験で難しかったですが、実際にお話を伺うと、設計だけでなく環境への配慮や使いやすさなど、想像以上に多くの人が思考を巡らせて建物が作られていることを知りました。
~~今後について~~
将来はエンジニアを目指しているので、今回のような試行錯誤の繰り返しや、チームワークを活かして一つの成果物を作る経験は、大学以降でも必ず活きると確信しています。
実際にやってみて、建築そのものよりも「材料」に興味があることに気づけたので、大学選びの参考にしたいです。
一つの目標に向かって歩み続けることを学んだので、これからの大学受験にも活かせると思います。また、プレゼンテーション賞をいただいた経験は、面接などでも自信になります。
私は外科医を目指しています。外科医はチーム医療であり、看護師や麻酔科医との連携が不可欠です。今回、制作の立場として「これを作ったら、現場の人は接合部の角度が複雑で苦労するだろうな」とか「こう固定すれば穴が開きやすくなるな」と、相手の立場に立って共感し、解決策を探す経験ができたことは、将来に繋がる大きな財産になりました。
~~担当の久保先生から~~
本校では通常、探究活動は個人、または6人程度の少人数で行います。しかし、今回は22人。コアメンバーは週に1回の活動日に集中して行い、それ以外の時間は他のメンバーに任せてリレー形式で進めていくという形でスタートしました。これは、非常に難易度の高い挑戦でした。3Dモデルを作成して「自分たちが何を作りたいのか」を全員で共有したり、あるいは、進捗状況を一目で分かるようにしたり、さらには、手作業であっても全員が同じクオリティで物を作り続けられるよう工夫を凝らしたりしました。そうした創意工夫のおかげで、完成に漕ぎ着けることができたのだと思います。確かに彼らはプレゼンテーションも非常に上手でしたが、評価されたのは「話し方」だけではありません。22人が力を合わせて一つの目標に向かった、その「中身」と「組織力」が評価されたのだと感じています。チームの底力があったからこその結果です。本当に素晴らしいと思います。
~~インタビューを終えて~~
荷重実験の際、開智生チームが会場で一番盛り上がったそうです。 「荷重をかけた時、斜辺の部分が湾曲して、全体が回転するように変形していきました。全く予想外の動きで、エンターテインメント性が高かったというか(笑)。」とのことでした。
難しい挑戦だったと思いますが、明るく話してくれたその姿に、長期間のチャレンジを乗り越えた自信を見ました。メンバーの一部は、すでに開智発表会の門の設計の準備に入っています。今回の経験を生かした今後の活躍に期待したいと思います。




