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尾身茂先生 講演会 「新型コロナ・パンデミック後に高校生が考えるべきこと~私の人生観・仕事観から~」

 2024年5月25日(土)に尾身茂先生の講演会「新型コロナ・パンデミック後に高校生が考えるべきこと 〜私の人生観・仕事観から〜」が行われました。講演には、4学年および5・6学年の医系コースの希望者79名が参加しました。

 講演では、以下のような貴重なお話をしてくださいました。

視野を広げ、人生に悩んだ青年時代

 高校3年でAFS交換留学生としてアメリカの高校で1年間を過ごした。帰国後、慶応大学法学部に進学した。当初は外交官になるだろうと考えていたが、どのように生きていくか迷い、本を読み漁る日々を送った。1~2日に1冊は本を読む、という生活を半年ほど送っていたが、ある時内村祐之著『わが歩みし精神医学の道』に出会い、医学の道へ進むことを決意した。自分の意思を貫き、猛勉強をして自治医科大学(一期生)に入学することになった。その後、地域医療に従事をしたあとで、友人の勧めでWHOの道を志した。

 

専門基礎医学研究に励む日々

 WHOに入職するためには、海外の大学または日本の大学で世界的に認められた分野で専門基礎医学を修めなければならなかった。そこでB型肝炎に関する世界的権威であった先生のもとで分子生物学の研究を行う日々を送った。

 2か月間、毎日のように試験管を振る生活は自分にとって合わなかった。自分が地道に実験を続けるということに向いていないということがよく自覚できた。不得手だったため、不整脈が頻発した。

WHOでの日々 ~個性とは何か~

 就職したWHO西太平洋地域事務局ではポリオ根絶政策に約10年間従事した。そこでも30億円もの資金不足や紛争に関わる問題、その他の政治的・社会的問題が立ちはだかった。

 WHOの西アジア局長になった際には、SARSの対策に追われ、中国をはじめ、各国政府と交渉した。

 ところで試験管を振る日々と各国政府との交渉と、一般的にはどちらの重圧が思いかは明白である。WHOではこういった交渉をしたが、自分は不整脈にはならなかった。こういったことが「個性」である。

 

開智生への3つのメッセージ

①「得手に帆を揚げよ」

 充実した人生で死ぬのがいい。ならば、それなりの覚悟を持つことが必要。自分が好きでないにも関わらずある仕事をしていたときに、社会のために尽くそうとは思わない。ただし得手は簡単には分からない。色々な経験をしながら自分と格闘することが大切である。

②「視野を広げよ」

 本を読むことはとても大切である。自分の見方以外に、他の見方があるということを知ることができる。自分の良さ・悪さも分かってくる。

③「困難を楽しめ」

 私の人生には沢山の困難があった。しかし私はそこに楽しさを感じた。「苦楽しい」というのは人生のリアリティーである。困難があったときには逃げないことが非常に重要である。困難の中で葛藤しなければ「自分は何者か」ということも分からない。

 質疑応答では、生徒から沢山の質問がでました。尾身先生は一つひとつの質問に対して、示唆に富んだお答えをしてくださいました。尾身先生、貴重なお話をどうもありがとうございました。

 

開智生による振り返り

(4学年生徒) 大学だけでは人生は変わらないという言葉がとても心に刺さった。やりたいことはあるけれど、就職するときに不利ではないかと考えていたが、尾身先生の話を聞いて自由に学んで仕事につなげたいと思った。

(5学年生徒) 医師というのは決まったルーティーンの中で一人一人の患者に寄り添うものかと考えてしまっていましたが、尾身先生のように社会へと進出し、できる限り多くの人命のために働く、というのもあるのだとあらためて感じました。国内で働こうかと考えていましたが、尾身先生のメッセージを拝聴し、国外で自分の限界に挑戦した方が自分の性格に合って、楽しそうだな、と自分の新たな可能性に気づけました。

(6学年生徒) 困難を楽しめなければ社会に貢献できないというのは本当だなと、高3の大学受験を控えている自分もその通りだと思いました。尾身先生の講義を聞き、私もやってみようという風に考えることができました。次また感染症が流行するときには、私たちが日本を支える番かもしれません。この講義の経験を胸に医師になり、社会に貢献できるように努めます。今日は本当にありがとうございました。