学校ブログ

卒業生インタビュー⑥(校長ブログ139)

 

久しぶりに卒業生インタビューを行いました。お相手は4期生の早田大高(はやたひろたか)さんです。一級建築士として第一線で活躍している早田さんの言葉には、一つ一つ重みがありました。

 

 【卒業してから今まで】

早稲田大学創造理工学部建築学科に入学、卒業後は修士課程・博士課程に進み、合計13年間、早稲田大学に所属。途中から助手や非常勤講師も務め、所属する研究室の教授が兼務している設計事務所の仕事も手伝う。その中で、「新宿区立漱石山房記念館」のコンペに応募したことが、大きな転機となる。この業界のコンペは、事実上最初から結論が決まっていることが少なくないとされるが、高校生以来、「夏目漱石」には特別の思い入れがあったことから、思い切って応募してみたところ、採用となり、無我夢中でその仕事に没頭する。漱石山房記念館が完成したことと、その教授の定年が重なったこともあって、独立して自分の設計事務所を立ち上げる。その後、大手設計事務所から業務委託を受けて仕事をしたりしたが、現在は、自分の事務所の運営と、母親が経営する建築事務所の手伝いと、専門学校で建築を教えることとの、三足のわらじを履いている。マルチタスクは本当は苦手とのことだが、追い込まれないと動かないタイプでもあるので、これでいいと思っているとのこと。また、人に教えることで頭が整理され、視野が広がるというメリットも感じている。

 

~~建築の仕事をする上で大切なことは?~~

一にも二にも体力だと思います。職人さんたちとのコミュニケーションもとても大事です。建築は完成までに数年間を要し、その間はとても地味な仕事の連続で、多種多様な人たちとの連携が重要ですが、完成したときの達成感は何事にも変えられません。同時に、完成した建築物は街の一部となるという点で社会性も求められるので、責任も感じます。その地域の歴史や文化に合わせる、言い換えれば、「文脈に載せる」ということも必要で、そのためにも多くのことを常に学ぶ必要があります。

 

~~創造的であるためには?~~

とにかく、アイデアをたくさん出します。斬新なアイデアを考えついた、と思ったら、すでに誰かが同じアイデアを実践していた、ということはよくあるので、過去の文献や記録も徹底的に参照します。お風呂に入っているときにアイデアが浮かぶ、ということもあります。絵を描いたら、それに言葉をつける、ということもよくやっています。言葉と物とを往き来することで、新しいアイデアが浮かぶことがあります。

 

~~今後の方向性は?~~

引き続き、いろんなしがらみの中でいろんなことをしていきたいと思っています。仕事をいただけるのは、自分のことを信頼してくれているからこそだと感じています。やりたい仕事を選ぶのも大事かもしれませんが、流れに身を任せる、という姿勢も大事だと思っています。自分に言い訳するような生き方はしたくない、後悔したくない、という思いは常に持っています。昔から自分は生意気な人間であると思っていますが、大学生時代の師匠との出会いが転機でした。「師匠はどうしてこう考えるのだろう」と徹底的に考えたことが、自分の視野や価値観を広げてくれたと思っています。いろんなことができるのも才能だと思い、しがらみの中でいろんなことに挑戦しつつ、新しいタイプの建築家をめざしていきたいです。「早田は暇になると余計なことをする」と開智生時代に先生から言われたこともありますし(笑)。

 

~~開智に入学した理由は?~~

6年生の夏頃に中学受験することを突然思い立ち、第一志望は落ちたので、第二志望の開智に入学しました。広いグラウンドがあることが、一番の決め手でした。

 

~~在学中の思い出~~

4年生のころからサッカー部のキャプテンをしていましたが、その頃はまだ高体連に入っていなかったので、「高体連に入る」を公約にして生徒会長に立候補しました。高体連に入ることはできたのですが、実際に公式戦に出場できるようになったのは、自分たちの代には間に合わず、一つ下の学年からでした。生徒会長として、いろんな仕事をしたと思います。生徒会館(=開智プラザ)の内容検討、委員会活性化、生徒手帳作成、などなど。理事長先生と激論を闘わせた記憶があります。5年生のころ、東京大学には進振り制度があって、入学後に進路を選べるということを知って、成績下位だったにもかかわらず、「東大をめざす」と宣言しました。多くの先生に驚かれましたが、それでも開智の先生方のサポートのおかげで、もう一歩というところまではいったような気がします。中学受験の時と同様、第一志望には受からず、第二志望のところに入学しました。

 

~~開智生へのメッセージをお願いします~~

いっぱい遊んで、いっぱい学んでください。身体も心も体力が大事。そして考えることも大事。苦労は、お金を出してでもやった方がいいです。そして、本を読むこと。それまで自分はまったく本を読まなかったのですが、現代文の教科書にあった、夏目漱石の『こころ』になぜか反応しました。「何だこれは?何が言いたいんだ?何で途中で終わるんだ?」と疑問だらけでした(教科書だから全編載せられないのはあたりまえなのですが)。それ以来、夏目漱石に惹かれるようになり、それが「漱石山房記念館」の仕事につながるので、人生何がきっかけになるかわかりません。本は読んだ方がいいですよ

早田さんが設計を担当した、「新宿区立漱石山房記念館」
事務所にお邪魔しました
早田さんが設計監理された木造オフィスの前で。

~~インタビューを終えて~~

社会の中堅として活躍中の早田さんですが、少年の頃の思いを今も常に持って、いろんなことにたえず挑戦している姿に、感銘を受けました。様々な人とコミュニケーションをとり、協力しながら、何かを成し遂げていく姿勢は、開智生のDNAになっているような気がします。今後の活躍に大いに期待したいと思います。