卒業生インタビュー⑫(UWCアメリカ)(校長ブログ184)
本校22期生で、5年生の時(2022年)にUWCアメリカ校に転学した中里菜緒さんが、帰国して開智を訪ねてくれました。UWCに行く前にインタビューをして以来です(校長ブログ70参照)。UWCでのこと、これからのこと、などについて、話を聞きました。
【UWCとは】
「UWC(ユナイテッド・ワールド・カレッジ、本部:ロンドン)は、世界各国から選抜された高校生を受入れ、教育を通じて国際感覚豊かな人材を養成することを目的とする国際的な民間教育機関です。現在までに、イギリス、カナダ、シンガポール、イタリア、アメリカ、香港、ノルウェー、インド、オランダ等にカレッジ(高校)が開校されています。」<UWC日本協会のHPより>
~~現地での様子~~
ニューメキシコ州にあり、夏暑く冬は酷寒という厳しい気候の土地でした。最初は食べ物に慣れるのにも苦労しました。寮に入っていましたが、夜更かしする生徒が多く、夜中に友人が部屋にやってきておしゃべりをするなど、自分の生活リズムを保つのが大変でした。英語力向上という点ではおしゃべりは役に立ちましたが。
~~学んだこと~~
国際バカロレア(IB)のディプロマプログラム(DP)を学びました。ハイレベル(HL)の数学・物理・化学を履修するので、少しは負担が減るかなと思って、日本語という科目を履修したのですが、これが「セルフトート(selt taught)」という先生がつかない形での授業だったので、意外に大変でした。IBは、ディスカッションやライティングが主なので、暗記や計算といった日本的な学びとはだいぶ異なるものでした。ディスカッションをする上では、英語力が物を言います。ネイティブの人たちと対等に議論するには、やはり事前に何を話すか、整理しておくことが有効でした。夜中のおしゃべりと勉強の時間の確保との両立が大変でした。また、最初のうちは、ネイティブの人たちの、スラングも交えた話がまったく聞き取れませんでした。わかったふりをして微笑んだりしていましたが、それではいつまでも進歩しないままだと思い、意味がわからない表現が出てきたら、臆せず会話を止めて、その意味を聞くようにしました。そのおかげでだんだんとリスニング力が上がってきました。結果的に夜中のおしゃべりも役に立ちました。また、一番初めに発言することによって、議論の主導権を握ることの重要性に気づき、常に一番最初に発言することを心掛けました。そして、office hourという先生との会話の時間を有効に活用し、積極さをアピールしたことも、好成績につながったかもしれません。
~~自主的に取り組んだこと~~
IBのカリキュラムとは別に、自主的な研究にも取り組みました。神経工学という分野に興味を持っていたので、マウスの脳波の測定データをフーリエ変換を利用して解析するという研究を、東京大学や慶應義塾大学の先生に協力を得て行い、論文にまとめました。何のツテもなく、いきなりメールでのお願いでしたが、好意的に対応していただき、とても感謝しています。その成果は、アメリカの大学出願の際にも提出しました。
~~今後のこと~~
理系の分野に興味があり、理系の分野に強い大学に行きたいと思って、合計13の大学に出願した結果、コロンビア大学に入学することになりました。アメリカの大学は学費がすさまじく高いので、柳井正財団の海外奨学金に応募し、無事認定を得られました。専攻は2年生の終わりまでに決まるので、現在はまだ決まっていませんが、自主研究でも取り組んだ、神経工学に興味を持っています。大学院を経た後、研究した成果を生かして企業で働きたいと思っています。スタートアップにも関心があります。2年間のアメリカ生活を経て、日本人・アジア人としてのアイデンティティも考えるようになりました。東アジア研究を副専攻にすることも考えています。同時に、以前からの夢でもある、宇宙への関わりということも、持ち続けたいと思っています。
~~UWCの同級生について~~
個性的で多様でした。皆がアメリカの大学に進学したいと思っているわけではなく、それぞれの道を生きようという感じでした。故郷に帰国してコーヒー農園を継ぐという人もいました。日本では、周囲がやっているから、とか、一番をめざそう、など、外的要因に影響されて進路を考える傾向があり、自分もそうでしたが、こちらで生活するうちに、自分の人生は自分自身の価値観で決めていくものだと感じるようになりました。
~~開智生へのメッセージ~~
考えすぎることなく、まず行動を。行動に移すことによって、道は開けていきます。アメリカに来て、日本の、開智の良さが改めてわかったように思います。開智ではいろんなチャンスがあります。それを生かしてください。
~~インタビューを終えて~~
ありとあらゆるチャンスを生かそうという積極性に圧倒されました。アメリカでの「あたりまえを問うこと」「正解がないような問いを皆で考え、話し合うこと」というような活動に、開智での探究・哲学対話の取り組みが生きていることを知り、うれしく感じました。また、ネイティブの英語力についていくために、話を遮ってでもわからない表現を質問していくという姿勢は、同じくUWCで海外に飛び立っていった16期生の山内陽さん(校長ブログ142参照)の話と共通していて、非常に印象深く感じました。開智での経験をさらに発展させて大きな成長を遂げたこと、自分の人生は自分で切り拓いていく姿勢を常に持っていること、などは、在校生にとっても、とても励みになることです。これからのさらなる飛躍を応援したいと思います。