卒業生インタビュー③(校長ブログ87 )
アメリカへの留学が決まった9期生の杉﨑悠君(東京大学→日本銀行→ボストンカレッジ博士課程)が、留学前に挨拶に来たので、お話を聞きました。
~~大学・大学院時代~~
歴史でも学ぼうかなと思って入学したのですが、一般教養の経済学がおもしろかったので、経済学部に進学しました。ゲーム理論を応用して、社会における人間の行動を数理的に研究することに興味を持ち、修士課程に進みました。学生時代はたくさん勉強しました。そのまま博士課程に進み、研究者として身を立てようと当初は思っていましたが、数理的な研究手法を深めるだけでなく、自分の学んだ理論を実際の社会でどのように役に立てられるのか、ということにも興味が湧いてきたので、博士課程には進まず、就職することにしました。
~~日本銀行での仕事・留学について~~
今まで学んだことが生かせるのではと思って、日本銀行に就職し、これまで調査統計局、金融研究所などで勤務してきました。現在の主な仕事の内容としては、民間企業へのインタビューに基づいて、「経済・物価情勢の展望(展望レポート)」の作成に携わっています。このほかにも、経済学の論文を書くといった仕事も経験しました。具体的には、日本の金利先物の価格等の変化を1分単位で把握することによって、金融政策の効果を測定する、という論文を公表しています。低金利の状態が長年持続している日本を研究対象とする場合、金利の変動が比較的大きい欧米を対象とした研究と同じ実証手法で金融政策の効果を測定してよいかは、自明ではないことも多いと思います。欧米を対象とした研究で確立された既存の手法を、日本経済の分析にどう応用していくかということについて、問題意識を持っています。
博士号を取って仕事に生かしている先輩方の着眼点の斬新さなどを見て、元々理論と実務の両立に関心があった自分としては、博士課程に進みたいという気持ちが高まってきました。そこで、行内の公募・選考を経て、幸いにも、4年間ボストンカレッジの博士課程で学ぶ機会を頂くことができました。経済的な諸現象を経済学のフレームワークでどのように解釈すればよいのかという問題意識がある中、例えば、「日本がなかなかインフレにならなかった原因の1つに、企業のロボット導入などによる省力化・コスト削減がある」という仮説を裏付けるような理論の構築・実証研究を金融研究所では行っていましたが、ボストンでは、その延長線上にあるような研究を行うことも視野に入れています。
~~将来の志望~~
ボストンで学んだことを生かして、アカデミックな業績を積みつつも、日本の金融政策、あるいは金融システムの頑健性向上につながるような仕事がしたいです。こうしたことを通じて、日本社会がよりよくなることに貢献したいと思っています。
~~開智生時代~~
中学受験の時は、東京の最難関とされる私学が第一志望でしたが、合格できませんでした。中学受験の勉強は、特に受験直前の小学6年生の時にはやる気も失っており、あまり楽しくなかった記憶があります。開智生時代は、ひたすらバスケットボールに熱中していました。4年生の時に、古典で悲惨な点数をとってから、さすがに勉強しなきゃ、と思い、勉強しはじめました。文系にしたのは、4年生の時の担任の先生(現代文担当)に強く勧められたからです。大学受験の勉強には一生懸命取り組みました。中学受験の時と違って、勉強することにやりがいも感じたし、各教科の本当のおもしろさに触れられたことが、勉強に熱中できた理由です。それは大学での学びにも生きました。
~~後輩へひとこと~~
やりたいことを各自しっかり見つけたいですね。「これだ!」「おもしろい!」と思えるものに出会えたら、それをとことん掘り下げてみることが大事だと思います。
~~インタビューを終えて~~
遠い目標を定めて、それに向かって一歩ずつ進んでいくやり方ではなく、その場その場で、自分が打ち込めることは何か、自分がおもしろいと思えるものは何か、を真剣に考え、進むべき道を選んでいくようなやり方をとっていると感じました。選んだからにはその道に全力に取り組もう、という姿勢が明確で、非常に頼もしく思います。バスケットボール部顧問として、杉﨑君の部活への取り組みを間近で見ていた筆者としては、物事に取り組む姿勢というのは、やはり中高6年間で身につくものなのだなあと、改めて思います。また、経済・金融の現象をどう理解するのか、という問題意識は、疑問~仮説~検証という流れからなる開智の「探究」の成果ではないか、と勝手に思ってもいます。これからの4年間の学びが、将来の社会貢献につながることを願ってやみません。