学校ブログ

鉄道模型コンテスト2023(校長ブログ141)

 今年も恒例の「鉄道模型コンテスト2023」が8月4~6日に開催されました。鉄道研究部の模型班が出展し、見事、「スタッフが選ぶベストワン賞」「ベストクオリティ賞」「ベストライター賞」の3つを受賞しました。おめでとうございます。4年生の石井雅人君に話を聞きました。

 

【作品名・コンセプト・参考にした駅】(制作記より)

作品名:塩狩 ~待つ~

コンセプト

 私たちの作品のコンセプトは「待つ」です。

 待つことは必ず相手を必要とする行為であり、待つ人は相手が来るまでは孤独な状態にあります。しかし、相手のことを信じて1人待ち続けるその姿にはあたたかな希望のようなものがあるのではないでしょうか。今回制作した塩狩の駅には、人が人を待つ、人が列車を待つ、行き違いのため列車が列車を待つなど様々な「待つ」が存在しています。

参考にした駅:北海道の北部を走るJR宗谷本線の塩狩駅付近を制作しました。

 

~~この題材を選んだ理由は?~~

 昨年の11月に部内で話し合った際に、まず、「人の暖かみが感じられる作品」がいいなと思いました。鉄道関係の写真集を4,5冊読みあさった時に、雪の北海道で列車を待つ女性の写真が掲載されているのを見つけ、心にグサッと刺さったのがきっかけです。一般的に、鉄道模型コンテストは、模型の制作技術を追求するパターンと、コンセプトの実現を追求するパターンの2つに大別され、多くの学校は前者、開智は伝統的に後者となっています。部員同士や顧問の先生方と話し合っていくうちに、三浦綾子さんの小説「塩狩峠」のエピソードもふまえ、「待つ」というコンセプトで雪の塩狩駅を再現することに決めました。

 

~~こだわりのポイントは?~~

①模型

冬の北海道ですから、何と言っても雪。模型用の雪を多数そろえて、適宜混ぜたりしながら、北海道の雪を再現しました。ラッセル車による除雪の跡も忠実に再現したつもりです。また、樹木。塩狩駅の現地は、針葉樹と広葉樹の両方が生えており、それを再現するには既製品では難しいと判断し、針金をうまく使って再現しました。

 

②プレゼン・制作記

コンセプトへのこだわりが開智の伝統でもあるので、プレゼンにもかなり力を入れました。プレゼン資料は2回作り直し、3バージョン目が4月にひとまず完成し、そこから8月まで何度もプレゼン練習を繰り返しました。開智の探究テーマで、毎年代表発表をしていたので、プレゼンにはそれなりに自信はありましたが、「待つ」という抽象的なテーマを説明するためにはどうすればいいか、一つ一つの言葉を真剣に吟味し、何度も修正しました。プレゼンの翌日に、会場で「昨日の塩狩のプレゼンはすごかったな」という雑談を耳にした時は、思わずガッツポーズしてしまいました。制作記の方は後輩といっしょに作成しましたが、何度も何度も手直しして制作しただけに、「ベストライター賞」受賞の瞬間は、その苦労が報われたと、後輩と抱き合って喜びました。

 

~~大変だったこと~~

駅舎にオレンジ色の電灯を付けたのですが、これが本物らしく光るようにするのは大変難しく、何度も試行錯誤しました。模型上の1mmは、実物では数10cmに該当するので、細かい部分の再現は細心の注意が必要だと思っています。会場への輸送中に破損する可能性を見込んで、予め予備の部品を作っておいたことが功を奏したとか、駅名票のサイズを間違って作っていたことに前日に気づいて夜中に作り直したとか、思い出は尽きません。それでも、当日、会場にいらした鉄研の卒業生の先輩たちからは、「木の生え方が、北海道の生態系に合っていない」「この雪は北陸の雪だ」などと厳しい愛の鞭をいただき、改めて先輩たちのすごさを痛感させられました。また、今回初めて模型と同じサイズの設計図を作成しましたが、これはうまくいったと思っています。

 

~~今後のこと~~

来年は部長になるので、模型班だけでなく、部全体を見る必要があります。よって、鉄道模型については、後輩に任せていこうと思っています。すでに動き始めています。



作品全容
苦労した明かりと樹木
夜景
鉄道研究部の部員たち。

~~インタビューを終えて~~

何かを始める際に、コンセプトや目的、目標を明確にすること、そしてその内容を他者に伝わるようにプレゼンテーションすること、といった開智生の特徴がよく現われていると思います。石井君たちは、「鉄研といえば、開智」となることをめざしているそうです。何もないところから、何かを創り出していく力というものは、世の中がどのように移り変わるとしても、大変重要なことだと思います。今から来年の鉄道模型コンテストが楽しみです。