卒業生インタビュー④(校長ブログ106)
「生き方を探し究めるカフェ」(校長ブログ102参照)で、14期生の田口さんに話を聞きました。非常に興味深いお話を聞けたので、さらに詳しく知りたいと思い、インタビューしました。
【田口一輝さんプロフィール】
14期生(2016年卒)。東京大学理科Ⅱ類に入学直後、東大の「FLY Program」に応募して1年間休学。九州、アメリカ、カナダ、中国で、アルバイト、ボランティア、バックパッカーなどを経験。帰国後、「芋の研究」に打ち込むことを決心。自ら「IMO project」というサークルを立ち上げる。農学部に進学して芋の研究に打ち込み、現在東京大学大学院農業生命科学研究科修士課程2年在籍中。最近は、「農業×データサイエンス」に研究の方向をシフトチェンジしている。4月からいったん情報系の企業に就職し、データサイエンスのスキル向上を図る予定。その他、「さつまいも博」の実行委員として企画に参加したり、NHK「沼にハマってきいてみた」にも出演するなど、多方面で活躍。
~~そもそも、どうして芋なんでしょうか?~~
直接的には、休学中に国内外の様々な農業に関わったことがきっかけです。帰国後、「作物学」の分野に進みたいと思ったのですが、具体的にどの作物を研究するかを決めるにあたり、大学の教授に片っ端から、「どの作物がスゴいですか」と聞きまくりました。その結果、栄養的にも生産効率的にも未来の地球を救う力を持っているにもかかわらず、あまり研究している人が多くないのが芋だということがわかり、サツマイモを研究することに決めました。成長するのに1年かかるし、遺伝的な解析が進んでおらず、遺伝子組み換えもあまり研究されていない、要するに、サツマイモって、研究対象としては面倒くさいんです。でもそこにチャンスがあると思いました。
~~サツマイモは何がスゴいんですか?~~
おいしい上に、栄養満点。そして、単位面積あたりの収穫量が、米の1.5倍。じゃがいもは多くの肥料が必要なのに、サツマイモは使う肥料の量が少ない。いいことばかりですね。将来、世界的な食糧不足が懸念されていますが、サツマイモは救世主になると思います。
~~IMO projectとは?~~
芋類の栽培や調理を通じてその魅力を発信することを目的としたインカレサークルです。芋愛にあふれた人たちが運営しています。帰国後、サークルを立ち上げようと思って、知り合いに声をかけまくって賛同を得ようとしましたが、最初は全然相手にされませんでした。その後、熱意が伝わり始めたのと、いかに芋がスゴいかということに関する私のプレゼンスキルが向上したのとが相まって、徐々に部員が増えていきました。自分一人で回すと1代限りのサークルになってしまうので、運営をどんどん後輩に任せるように心がけました。
サークルHPのURL:https://todaiimoproject.wordpress.com/
~~最近の研究の様子と、今後のことについて、教えてください~~
作物学一筋で、博士課程に進学するつもりでしたが、ドローンを使ってサツマイモの生育状況を空から撮影する手法に出会って、研究の方向性が変わってきました。大量の画像データを処理して、様々な環境条件とサツマイモの生育との関連性について研究を進めていく上で、膨大なデータを効率的に処理していくことの重要性を痛感させられました。これまで自分は統計処理を軽視していたことに気づき、データサイエンスをしっかり学ばなければと考えるようになりました。そこで、博士課程には進まず、情報系の会社に就職して、データサイエンスの運用スキルを上げた上で、いずれまた研究分野に戻って来ようと考えています。
~~開智生時代をふりかえってください~~
小学校5年生の時に開智のオープンキャンパスに参加し、理科の実験で感動したことが、開智を志望した理由です。その時点では成績的には厳しいものがありましたが、何とか合格することができました。テニス部に入ってがんばったこと、開智発表会のクラス企画で中心的な役割を担ったこと、などが思い出されます。毎年行われる探究発表は、緊張してしまう方だったので、最後の方のテーマは、「緊張について」でした。イギリスフィールドワークにおいて、英語で発表したことは、卒業後に海外に出て行くことにつながったと思っています。大学入学直後に1年間休学して何かにチャレンジする「FLY Program」を知って、東大をめざすことにしました。最後の1年間は、皆で学び合って受験勉強に取り組みました。受験勉強は自分的には楽しい思い出となっています。仲間で学び合うということが、大学での学びに直結していると感じています。
~~久しぶりに開智に来てみて感じたことは?~~
地域のボランティア活動や、畑を作って作物を栽培している活動のことを聞いて感動しました。研究用のサツマイモを植える場所の確保に苦労しているので。私自身、開智時代は楽しい毎日を送っていましたが、同時に、自分は外のことを何も知らない、目の前の勉強は楽しいが、先々自分は何をするんだろう、自分の人生の軸となるものがほしい、と考えていました。FLY Programに憧れたのもそれが理由です。今の開智生が、どんどん外に出て行っていろんな体験をしていることを知って、心から応援したいという気持ちになりました。
~~開智生にメッセージをお願いします~~
進路選択は、悩み抜いてください。最後は自分が決めることが大切です。人生の主語は、他の誰かではなく、自分であってほしいと思います。
~~インタビューを終えて~~
他にも、世界一周プレゼンコンテストで決勝戦まで残った話とか、芋の卸商をしている方と意気投合して、さつまいも博のスポンサーになってもらった話、開智生時代に自分が言い出しっぺで科学の甲子園に出た時、生物選択ではなかったのに、行きがかり上生物担当となるしかなく徹夜で準備した話、開智発表会で「ばかっこいい」動画を撮った話など、楽しい話をたくさん聞きました。何よりも、楽しみながらも真剣に自分の人生について考え、行動に移している姿に、心を打たれました。この行動力が、開智時代に培われたものだということを知り、うれしい気持ちにもなりました。開智の教育理念である、社会貢献に向けてまっしぐらに進む田口さんの今後の取り組みを、応援していきたいと思います。